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「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。(感想・考察・謎解き)  (ネタバレあり)

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(村上春樹)の謎解き。事件の真相・犯人を推理し、特定します。

余談 その1 「良いニュースと悪いニュースがある。」の話の意味は?(平成25年5月3日追記あり)

(目次へ戻る)(初めてこのブログに来られた方はまず目次をご覧ください。)

 

*激しくネタバレしています。ご注意願います。 

 

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ここからは余談です。

アカがつくるに話した、本の帯にも使われている「良いニュースと悪いニュースがある。」の話ですが、これにはどんな意味があるのでしょうか?

まず、話の内容自体の意味ですが、これは典型的な詐術です。手の指の爪をはがされるのも、足の指の爪をはがされるのも、どちらも悪い選択枝でしょう?

しかし、どちらも悪条件でしかない2択の選択枝を突きつけられ、変更はきかない、どちらか選べ、選ぶ自由は君にあるなどと言われてしまうと、相手は、まるでどちらかを選択しなくてはいけないような気分になってしまいます。また、君に選ぶ自由はあるようなことを言われると、自分はなにか自由を手にしているかのような気分にすらなります。本当はこんなのは自由とは呼べません。2択のどちらを選んでも悪い結末なのです。

しかし、2択であれ自分には選択権があるのだと勘違いしてしまうと、聞かされた相手は、どちらかがよりマシな選択枝であるかのような錯覚に陥ってしまうのです。そして、悪い選択枝を自ら選んでしまう。どちらを選んでも悪い選択枝なのだから当たり前です。

この詐術は、時間制限をつけて(「10秒のうちに決めてもらいたい。」)相手に落ち着いて考える暇を与えないと効果がより高まります。

さらに一番初めに話す「良いニュースと悪いニュースがある。」という言い回しも詐術の一つです。「良い」「悪い」などという言葉を先に使って相手に印象づけると、相手はその後、言われた選択枝のどちらかが「良い」選択枝で、どちらかが「悪い」選択枝であるかのような連想をしてしまうのです。

以上、典型的な詐術テクニックでした。皆様もお気をつけください。

 

この話は物語に何か関係しているのでしょうか?実は、この話は物語の何かを暗示しているのだと思われます。ここから更なるネタバレになります。

エントリー本編をまだお読みでない方は、エントリー本編を最初(1.「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」は推理小説である。)から(27.2人の結末は?③)まで順番に読んでいただくか、最初から読むのが面倒くさい場合は、(15.シロを殺したのは誰か?)あたりから27.まで順番に読むかどちらかをご選択ください。(「良いニュースがあります。あなたにはどちらかを選ぶ自由があります。」)

エントリー本編を読み終わられた方、既読の方は、下へスクロールしてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実は、この話は多崎つくると沙羅の未来を暗示しているのだと思われます。クロの忠告を守って男の人の話をしないようにしても、忠告を破って男の人の話をしても、どちらを選択しても良くない結末が待っているということです。

クロの忠告を破って男の話をした場合、2人は破局することが(忠告を無視したということ自体によって)暗示されています。では、クロの忠告を守って男の人の話をしなかったとしても結末は、(26.二人の結末は?②~クロの忠告を守ったときのシミュレーション)のようになります。どちらを選んでも悪い結末なのです。

 しかし、選択枝のどちらを選んでも悪い結末であっても、多崎つくる君は選択枝のどちらかを選ぶ自由は持っているのです。ん?これは良いニュースなの?

 

(平成2553日追記)

 あるいは、以下の解釈も可能です。

 

 このエピソードで、セミナーの受講生は自分の自由な意思により選択をして行動しているように錯覚させられていますが、実際には講師のアカによってその意思と行動は誘導されているのです。

それと同じで、この小説の主人公多崎つくるは彼の巡礼において、自分の自由な意思で選択をして行動をしていると自分は思っていますが、実際には沙羅によってその意思と行動は誘導されているのであることをこの話は示しているのです。

 

上記の解釈もアリかと思いますが、この解釈はちょっとシンプル過ぎて面白みがないかなとも思います。

 

(お読みいただきありがとうございます。もし、よろしければ感想などありましたら、コメント欄にコメントしていただけると嬉しいです。)