「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。(感想・考察・謎解き)  (ネタバレあり)

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(村上春樹)の謎解き。事件の真相・犯人を推理し、特定します。

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。⑩

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*激しくネタバレしています。ご注意願います。

 

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19.なぜ、シロはつくるにレイプされたと言ったのか?③

20.なぜ、シロは浜松へ行った?

 

 

19.なぜ、シロはつくるにレイプされたと言ったのか?③

 事件によってグループが崩壊したのではなく、グループが崩壊したことによって事件は発生したのです。このことをシロは1番よく理解していたでしょう。禁忌を破ってグループを崩壊させたことにより自分を守ってくれなかった多崎つくるをシロは非常に恨むことになります。禁忌を破ったものは断罪されるべきなのです。1年遅れで禁忌を破った多崎つくるに断罪が下されます。他のメンバーがシロの嘘に付き合ったのも、心の中で禁忌を破った多崎つくるにも罪がある、と思ったことがあるのかも知れません。

 

20.なぜ、シロは浜松へ行った?

  なぜ、シロは浜松という、行った事もない土地へ逃げたのでしょうか?彼女が名古屋から逃げ出したのは、父親から逃げ出すためです。クロという守護者を失った彼女は、名古屋から逃げ出す必要がありました。行き先は、本当は東京へ行きたかったのではないでしょうか?東京には多崎つくるがいます。彼女が多崎つくるに恋愛感情を持つことはありませんでしたが、高校から1番頼りにしていていたのは実は多崎つくるだったのだと思います。彼女が多崎つくるにレイプされたという妄想がいつまで続いたのか、クロは最後まで続いたと言っていますが、本当は、彼女ははじめから自分を信じてはいなかったのではないでしょうか?

本当は多崎つくるに助けを求めて東京へ行きたい。しかし、その多崎つくるを手ひどく裏切り傷つけたのは自分だ。今更多崎つくるに会うことはできない。たとえ、多崎つくるが奇跡的に彼女を赦して受け入れてくれたとしても、彼の近くに行けば自分の「悪霊」が今度こそ本当に彼を破滅させてしまうだろう。だから、彼女は誰も友達のいない土地でひっそりと自分の「悪霊」を閉じ込め、孤独に生きることを選択しました。浜松は、名古屋と東京のほぼ中間にあります。東京に行きたいが行けない、シロの切ない思いが浜松という土地を選んだのです。

しかし、「根源的な悪」は彼女が逃げてひっそり暮らすことを許しません。彼女は追いかけられて殺されます。

 

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