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「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。(感想・考察・謎解き)  (ネタバレあり)

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(村上春樹)の謎解き。事件の真相・犯人を推理し、特定します。

余談 その18 沙羅の言葉(工程表、含み)、アカの言葉

(目次に戻る)(初めてこのブログに来られた方はまず目次をご覧ください。)  

 

*激しくネタバレしています。ご注意願います。

 

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 沙羅が4人の名前を教えてほしいと頼んだ時、以下のように言っています。

「でもあなたがその気になりさえすれば、きっと解決できる問題だと思うの。(中略)ただそのためには必要なデータを集め、正確な図面を引き、詳しい工程表を作らなくてはならない。なによりものごとの優先順位を明らかにしなくてはならない」

 

 これは、多崎つくるに、シロ(柚木)が殺された真相を探り明らかにしてほしいという意味でした。(この時点では多崎つくるはシロが死んでいることすら知りませんが。)

そのためには、必要なデータを集め(関係者(グループのメンバー)に聞き込みを行い)、正確な図面を引き(正確に推理し)、詳しい工程表を作らなくてはならない(捜査をして推理するための計画を立てないといけない)。なによりものごとの優先順位を明らかにしなくてはならない(なによりもシロの死の真相を解き明かすことが重要である)。

 

つまり、沙羅は多崎つくるに「探偵」になって、「シロの死の真相」を解き明かしてほしいと言ったのです。しかし、この沙羅の隠されたメッセージは多崎つくるには結局正確には伝わらず、彼は「ドジな探偵」のままでしたが。

 

クロへの巡礼が終わった後、つくるは沙羅に電話をしてクロへの巡礼を報告しますが、その際につくるは沙羅の沈黙に「風向きを計るような、含みのある沈黙」を感じます。結局つくるはこの「含み」がなんであるかに気が付きません。

クロへの巡礼により、多崎つくるは「シロの死の真相」に一段と近付いたはずでした。この後、本来多崎つくるはシロの死に疑問を持ち、シロの死の真相を探るための作業が続くはずなのです。これが「なによりものごとの優先順位を明らかにしなくてはならない」ことです。

ところが、多崎つくるは沙羅への報告の電話で、クロへの巡礼でもうこの巡礼(真相を探る旅)が終わったような感じで話しています。まだ何も解決していないのに巡礼が終わったと感じている、つくるの態度に沙羅は非常に不満で「もっと話すべきことが他にあるだろう」と思っているのです。

 

     ◇   ◇   ◇

 

 上とはちょっと関係のない話です。

アカは次のように言っています。

「『しかしもちろんいちばん大切な部分は書かれていない。それはここの中にしかない』、アカは自分のこめかみを指でとんとんと叩いた。『シェフと同じだ。肝心なところはレシピには書かない。』」

 これは、「この小説(『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』)にはいちばん大切な部分(事件の真相)は書かれていないが、作者の頭の中にはある(真相は存在する)」というアカの口を借りた作者からのメッセージです。

 

(お読みいただきありがとうございます。もし、よろしければ感想などありましたら、コメント欄にコメントしていただけると嬉しいです。)