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「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。(感想・考察・謎解き)  (ネタバレあり)

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(村上春樹)の謎解き。事件の真相・犯人を推理し、特定します。

余談 その11 恵比寿のバーで別れた後の、2人の「それぞれの考え」とは?

(目次に戻る)(初めてこのブログに来られた方はまず目次をご覧ください。) 

 

*激しくネタバレしています。ご注意願います。

 

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 16年前にグループから絶交されたことを沙羅に打ち明け、恵比寿のバーを出た後、多崎つくるはあらためて沙羅を食事に誘い、また、うちに誘います。しかし、沙羅は「そういう気持ちになれない」と言って帰ってしまいます。それぞれの考えに耽りながらそれぞれの住まいに2人は帰ります。

 

 では、この2人の「それぞれの考え」とは一体何だったのでしょう?

 

まず、沙羅ですが、もともと沙羅は目的があって多崎つくるに近づいています。(24.沙羅はなぜ、多崎つくるに近づいたのか?参照。ただし、初めて左記エントリーをご覧になられる方は、このエントリーだけ読んでも意味がよくわからないと思いますので、15.シロを殺した犯人は誰か?から順番にご覧いただければと思います。)

しかし、多崎つくるは事件の真相について何も知らず、しかも自ら真相を探る気はないなどと言っています。彼が自ら真相を探って、事件の真実を知るように仕向けるには何か作戦を考えなくてはいけません。彼女は、これから作戦を考える時間が必要だったのです(この考えた末の作戦が、「巡礼計画」になります)。

 

 これに対して、多崎つくるが考えていたのは、「もう、彼女と会うことはないのかもしれないな。」ということです。だって、沙羅の別れ際の態度は、彼がいきなり重い話をしたので、彼女がドン引きして「この彼、なんか『変』。もう、付き合うのをやめよう・・・。」と思っているような態度にしか見えません。その後取り繕うように「また、誘ってくれる?」というのもなんか典型的な「社交辞令」ですよねー。その後、何度誘っても「その日は忙しいの。」と断られ続け、「あー、やっぱり振られたのか。」と気が付くパターンです。多崎つくるにしてみれば「あちゃー、やっちまった。余計な話をしちまった。」と思ったことでしょう。

 

 いや、実際例えば下記のような投稿が「発言小町」とかにされたらどうなることでしょう。

 

「こんにちは、さらと申します。現在付き合っている彼についての相談です。4回目のデートのとき、彼がいきなり重い話をしました。『実は、自分には故郷に4人の親友がいたのだが、16年前いきなり何の理由も告げられず絶交されてしまった。』と言っています。私は、びっくりして『その理由を知りたいと思わなかったの?』と聞いたら、『真相がどのようなものであれ、それが僕の救いになるとは思えなかった。どうしてかはわからないけど、そういう確信のようなものがあったんだ』などとわけのわからないことを言っています。このような彼、どう思いますか?」

 

 これに対して以下のような投稿が殺到するでしょう。

「その彼、絶対に変です。16年間も絶交された真相を知ろうとしないなんて有り得ない!」「私も、その彼は変だと思います。私の想像なのですが、彼は、実は絶交された理由を知っていて、その理由が自分に都合の悪いものなので、理由は知らないとごまかしているだけなんじゃないでしょうか?」「親友4人にいきなり絶交されて、理由が思いつかないなんて、彼は根本的な問題があるのではないでしょうか。」

 

 「こんにちは。さらです。では、なぜ彼はこんな話を私にしたのでしょうか?自分にとって都合の悪い話なら、わざわざしなければいいのに・・・。」

 

「それは、このままお付き合いを続けたら、やがて親友4人から絶交されたことや、それにまつわる悪い噂があなたの耳に入ってしまうかもしれないと思ったのではないでしょうか?悪い噂があなたの耳に入る前に、彼は先回りしてあなたに話をした方がいいと思ったのでしょう。」

 

という展開になって、あとは「その彼、変」「別れろ」「別れろ」の大合唱になること間違いなしです。

 

 「なぜ、多崎つくるは仲間から絶交されたときに、すぐに真相を明らかにしようとしなかったのか?」についての検討は下記をご覧ください。

(リンク先http://sonhakuhu23.hatenablog.com/entry/2013/05/18/085932

 

(お読みいただきありがとうございます。もし、よろしければ感想などありましたら、コメント欄にコメントしていただけると嬉しいです。)