「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。(感想・考察・謎解き)  (ネタバレあり)

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(村上春樹)の謎解き。事件の真相・犯人を推理し、特定します。

余談 その2 多崎つくるが抱いた「微かな異物感」の正体は?

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 アカに会った後、多崎つくるは沙羅に電話して、留守番電話に伝言を残します。翌日、沙羅から電話がかかってきて、明後日の夜に会って話をする約束をします。この電話の後、つくるは、沙羅と話をする前には感じなかった、胸に微かな異物感が残っていることに気が付きます。

 多崎つくるが抱いた「微かな異物感」の正体は何だったのでしょう?

 

初めてこの文章を読んだときにはさっぱりわかりませんでした。多崎つくると一緒になってページを読み返してみたけどわかりません。

ここでは小説を読み直して、改めて考えてみた仮説を書いてみます。この仮説が本当に正しいかは、確証がないためわかりません。

 

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小説を読み直して考えたのですが、彼女が予定表を調べる時間に「15秒」ってかなり長くないですか?彼女みたいにスケジュール管理をしっかりしていそうな人は、あさっての予定などノータイムで答えられるのではないでしょうか?もちろん現実世界では、スケジュールを書いた手帳が手元になくて探して時間がかかったということもありうる訳ですが、小説世界では、主人公が「微かな異物感」を抱く以上、そこに何か「おかしな事」があるはずです。この短い記述の中で、「おかしな」記述はこれぐらいしか思いつかないのですね。

 

なぜ、時間がかかったのか?ここからは仮説なのですが、彼女の側に誰かいて彼女は彼と(多崎つくるには分からないように)相談していて時間がかかったのではないでしょうか?では、彼女の側にいて相談されていた人物とは誰か?会社の上司とスケジュールの調整をしていた?いえいえ、小説世界においてはそんな物語の本筋とは関係のないような展開はいたしません。(そんな話なら、つくるに分からないようにする必要もありませんし。)主人公に「微かな異物感」が残る以上、そこには物語の本筋に大きく関わる伏線があるはずです。

 

物語の本筋に大きく関わりがある、沙羅の側にいて相談されるような人物はこの物語では1人しかいません。もちろん、「青山で彼女と一緒に歩いていた男性」です。男性の正体については(22.沙羅と一緒に歩いていた男性は誰?)で書きました。(ただし、本編を未読の方は、なるべく本編全体をご覧願います。)

 

 沙羅が男と相談していたとすると、多崎つくるの巡礼の旅の「意味」は大きく変わってきます。もともと、彼の巡礼の旅は沙羅によって仕組まれたものだったわけですが、沙羅が男と相談してこの巡礼の旅をプロデュースしているのだとしたら、彼の巡礼の旅は「沙羅と男によって仕組まれたもの」だったことになります。正直にいって、小説では語られなかった予想されるラストはかなり怖いものになると思います。

(お読みいただきありがとうございます。もし、よろしければ感想などありましたら、コメント欄にコメントしていただけると嬉しいです。)

 

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