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「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。(感想・考察・謎解き)  (ネタバレあり)

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(村上春樹)の謎解き。事件の真相・犯人を推理し、特定します。

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。⑪

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*激しくネタバレしています。ご注意願います。

 

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 21.沙羅は何者?

 22.沙羅と一緒に歩いていた男性は誰?

 

 21.沙羅は何者?

重要な登場人物でありながら、色彩を持っていない人物がいます。木元沙羅です。しかし、これは表面上の話で実は沙羅は色彩を持っています。沙羅双樹の花の色は白いのです。彼女はシロです。もちろん、シロ本人ではありません。シロの近親者であることを彼女の名前は示しています。シロの近親者の中で条件に当てはまるのは、2歳年上の姉です。沙羅も2歳年上でちょうど歳が合います。シロに深く関わっていることがメンバーの話の中でたびたび示されている姉がこの小説に登場しない訳がないのです。

名字が違うのは何故か?偽名かもしれませんし(勤め先まで知っているのでこれはなさそう)1度結婚し、離婚しているが離婚前の名字を使っているのかもしれません。いずれにしても彼女は、「告白」をするまで、自分の正体をつくるに明かす気はありません。

つくるは、彼女の顔を知っているはずでは?16年という歳月は、つくるの容貌を随分変えました。まあ、彼の場合歳月よりも死に近づいた体験が容貌を変えたのですが。同じように16年の歳月とシロの「悪霊」の側にいた体験は、大きな容貌の変化を沙羅に与えたのでしょう。しかし、つくるは沙羅にシロの面影をどこかに見出し、それがつくるが沙羅に惹かれる大きな要因となります。

 

 22.沙羅と一緒に歩いていた男性は誰?(21.を先にお読みください。)

彼女の父親です。小説のこの部分を読んだときなんとなく違和感がなかったでしょうか?彼女が二股をかけているかもしれないという描写を書くのになぜ20代~40代の男性ではなく、あえて50代の男性にしたのか。これには当然意味があるのです。あと50代前半とつくる君は見ていますが(これだとちょっと父親としては若すぎますね)、これはミスリードで実際の歳はもっと上だが若くみえるのでしょう。しかし、「あら、つくる君が恋人と誤解していた人は実は父親だったの。つくる君たら、嫉妬しちゃって可愛いわねー(本人は嫉妬じゃないと言い張っていますが)。」てな、ラブコメ的な展開を村上春樹が書く訳がありません。彼が二人を見てショックを受けたのは、二人がどう見ても「恋人同士」にしか見えなかったからです。父娘に見えるなら、「父親かもしれない」とつくるは思ったとか書いているでしょう。つまり、彼女と50代の男性は、性的関係もある恋人同士であり親子でもあるのです。もちろん彼女の父親はこの事件の真犯人(15.シロを殺した犯人は誰?参照)「根源的な悪」の人物です。真犯人が小説に登場しなければ、それは推理小説として失格でしょう。

 

(お読みいただきありがとうございます。もし、よろしければ感想などありましたら、コメント欄にコメントしていただけると嬉しいです。)