「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。(感想・考察・謎解き)  (ネタバレあり)

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(村上春樹)の謎解き。事件の真相・犯人を推理し、特定します。

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。②

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     激しくネタバレしています。ご注意願います。村上春樹の他の小説(「スプートニクの恋人」「ノルウェイの森」)にも言及していますので、ご注意願います。

 

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3.この小説のテーマは?

4.名前の意味は?(平成25年5月1日追記)

 

3.この小説のテーマは?

 「ノルウェイの森」の有名なエピソードに、レイコさんを破滅させた女の子の話が出てきます。この話はおそらく実在のモデルがいるのでしょう。そして、作家本人が体験した話ではなく、(そんな災厄に本人があったら落ち着いて文章になどできません。)聞いた話だと思われます。「結局、あの女の子は一体何だったのか?」という疑問が作家村上春樹の中で疑問が澱のように残り、このことについて長年考察を続けてきたのだと思われます。彼はこのエピソードを1度小説として再現しようと試みますが断念し(「スプートニクの恋人」です)その小説は全く違ったテーマになりました(すみれちゃんはそんな邪悪な子じゃありませんからね)。そして、「ノルウェイの森」から26年、長年考察を重ねた(いや実際には、その間ほとんど考えてなかったのかもしれませんが)その結論が小説として出されました。「ノルウェイの森」で村上春樹は、この女の子を「根源的な悪あるいは病」に近い存在として認識していたように見受けられましたが、この小説でその認識は根本的な訂正がなされています。この小説では、その女の子はシロとして登場します。

 

4.名前の意味は?(平成25年5月1日追記)

アカ、アオ、シロ、クロの色の意味は中国の天の四方の方角を司る四神獣をあらわします。北(玄武、クロ)、東(青竜、アオ)、南(朱雀、アカ)、西(白虎、シロ)です。では、多崎つくるはどこにいるかというと中央の麒麟です。中央(麒麟、たざ「き」)。麒麟の麒はオス、麟はメスですので、つくる君は、「き」だけでいいのですね。色はあえていうなら「黄」ですが、これはそんなに重要ではありません。方向や何の神獣なのかは重要でなく(いや、もしかして深い意味があるのかも知れません。私はわからないので興味がある人は調べてみてください。)5人の立ち位置が重要です。

立ち位置的に、多崎つくるは5人の関係を正五角形に例えていますが、実際はそうではないのです。多崎つくるを中心として東西南北ちょうど十字型に配置されているのが、彼らのグループです。多崎つくるがこのグループの中心であり、結節点であるが故に、彼がグループから離れると結節点がなくなり、彼らは必然的にバラバラになるのです。

(平成25年5月20日追記)(多崎つくるは、「駅」を作ります。「駅」とは「結節点」でもあります。)

多崎つくるは自分には色彩がないといつも自分を卑下していますが、本当に色彩のない人間を村上春樹が表現したかったら、名字に「無」か「透」を入れるでしょう。

平成29年4月30日追記)(あるいは「免色」とか?この名字はモヤモヤしますね・・・・・。)

「無」どころか「多」を持つ多崎つくるという人物は、他人の色彩を受け入れて多彩な色彩を出せるオールマイティカードなのです。そして、彼によって周りの人間も色彩を出せるのです。多崎つくるが色彩を失うと、周りの人間も色彩を失います。

(平成25年5月1日追記)

アオ・アカ・シロ・クロの色は四季も意味しています。すなわち、

①春(青春、アオ)→②夏(朱夏、アカ)→③秋(白秋、シロ)

→④冬(玄冬、クロ)

の順番です。この順番の意味は、基本的には多崎つくるがメンバーを巡礼する順番を示しているのですが、少し複雑な事情も絡んできます。

 

 詳細は、(23.なぜ、シロへの巡礼がない?)の(追補.シロへの巡礼はあった?)に書きましたが、かなり謎解きのネタバレしたエントリーになっていますので、23.を初めて見る方はできればあたりからエントリーを順番にご覧いただき、前にあるエントリーより先に23.をご覧にならないように願います。

(23.のリンク先はです。)

 

(お読みいただきありがとうございます。もし、よろしければ感想などありましたら、コメント欄にコメントしていただけると嬉しいです。)